除夜のテキストラーイク祭り


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12月31日、サンタクロースにプレゼントをもらった。


夢の中で大きな箱を持った老人が微笑んでいる。
それがサンタクロースだと漠然とわかった僕は、なんでクリスマス過ぎに来たのかと尋ねた。


「ワシはね、小さい頃からずっとサンタクロースを信じてくれていた君には毎年プレゼントを届けてたんだよ。」


「毎年、ですか…。」


「そうだよ、毎年クリスマスには少しだけ幸せな事があったろう。」


思い返せば毎年クリスマスには女の子とデートしていたし、大学の合格通知が届いたのもクリスマスだった。
僕にとってクリスマスは“今年を除けば”ずっと幸せだった。


「歳なのかねぇ、今年はすっかり君の元に来るのを忘れていてね。今来たってわけさ。はい、プレゼント。」


そう言って両手で抱えていた大きな箱を僕にくれる。


「中身はなんですか?」


そう聞くとサンタクロースはにっこりと笑い、


「パンドラの箱」


とだけ言って姿を消した。


サンタクロースの姿が見えなくなるのと同時に目が覚めた。枕元には見覚えのない箱がひとつ置かれている。真っ白な紙に真っ赤なリボンが結ばれたその箱を手に取ると、ぱさりと一枚のカードが落ちて来た。




~パンドラの箱~
この箱は2007年のうちに開けると、2007年で、一番やり直したい時に戻れます。しかし、その後あなたの望む未来になる保障はありません。
また、2008年になってから開けると、一年間幸せに暮らせます。


パンドラの箱の底にあったのは希望だと言われていますが、はたしてどうなのでしょう。真実はあなたの目で確かめて!


サンタクロースより






夢の続きを見ているのだろうか。考えれば考えるほどわからなくなってくる。でも、もし戻れるなら、今年のクリスマスに戻れるならどうだろうか。今年も幸せなクリスマスになっただろうか。






クリスマスイブの日、二年半付き合った彼女と別れた。その日、彼女はいつも僕に愛を語りかけてくれる時以上に真剣な顔で話し始めた。


「昨日さ、お母さんが倒れたらしいの。」


「命に別状はないんだけどさ、やっぱり色々大変みたいでね。」


「それでね、今年いっぱいで大学辞めて地元帰ろうと思ってさ。」


「お母さんのお店を継ごうって思ってるの。」


「だからね、ほとんど会えなくなってさ、迷惑かけちゃうから別れよ。」


母親が彼女を育てるために開いた居酒屋を彼女は継ぐと言う。父親がいなかった彼女にとって、そのお店が父親みたいなものなんだろう。彼女のしっかりとした決意を前にした言葉を前に、僕はただうなずくことしかできなかった。


その後の食事は何を食べても味がしなくて、街頭のイルミネーションも僕にはモノクロに見えた。新宿駅で彼女と別れる時、彼女が中央線の電車に乗ってドアが閉まるまでの間、僕は彼女を東京に引きとめようと必死だった。


「あの、さ。」


「何?」


「今日は楽しかったよ、ありがとね」


「うん、私も。ありがと。」


「お店がんばってね。」


「うん、がんばるよ。君もがんばってね。ちゃんと就活しなきゃだめだよ。」


「あの、」


ようやく彼女を引き止める言葉を言おうとした時、ベルが鳴り、電車のドアが閉まる。ドアの向こうでは彼女が笑っている。電車は、笑顔の彼女を乗せてホームからすべる様に出て行く。
僕は知っていた。その時の彼女の笑顔は、精一杯の作り笑顔だったことを。二年半の終わりなんてそんなあっけないもんなのかな、と無理やりに納得するしかなかった。


「納得、したのかなぁ。」


そう呟きながら朝ごはんを食べる。


「食べたら、昨日言った買い物お願いね。あれがないと年越せないからね。」


「はいはい、ちゃんと行きますよー。」


年越しそばの麺を買い忘れたという母の頼みで買い物に出る。気乗りはしないが大学が休みの間、ニート顔負けの生活を送っている僕に拒否権はなかった。


外に出ると、今年最大の寒波のせいか身を切り裂くような風が吹いていた。見慣れた街の景色も今年最後の景色と思うとどこか美しく見えてくる、といいのだがそうはいかない。


箱、そう箱だ。あの箱どうしよう。パンドラの箱は開けないほうがいい事の例えにも使われるくらいだから開けないほうがいいんだろうか。でも、サンタクロースからのメッセージは明らかに開けろといっているようなものではないか。でも、こんな夢みたいなことめったにないし…。




よし、開けよう。どうせなら今年のうちに開けたほうが得なんじゃないか。今から今年の競馬の結果を調べて戻れば大金持ちになれるし、単位を落としたテストだってもう一度受けられる。今度は同じ問題だから単位を落とすようなこともないしね。


そしてクリスマス、彼女を引き止めることもできたかもしれない。もし駄目だとしても、二年半の終わりにはもっとドラマチックな最後があるんじゃないだろうか。


家に帰ったらすぐ開けよう。よし、さっさと買い物なんかすませて家に帰ろう。スーパーについた僕は店内を小走りで買い物を済ませ家路を急いだ。




家まであと五分、スーパーと家とのちょうど中間あたりの交差点で信号待ちをしているとき、携帯電話がなった。携帯のディスプレイには、まだメモリを消していなかった彼女の名前が浮かぶ。箱を開ければどうにでもなる。電話に出なくてもよかったが、彼女に悪い気がして電話にでる。


「もしもし。」


「もしもし私、突然ごめんね。いま大丈夫?」


「うん、何?」


「この前は突然あんなこと言ってごめんね。謝りたくってさ。」


「いや、別にいいよ。誰が悪いってわけじゃないし。」


「そっか、でもさ、あの時泣きそうな顔してたからさ。」


あの時、僕が彼女を見ていたように、彼女も僕を見てくれていたようだ。そんなに泣きそうな顔をしていただろうか。確かに心の中は泣いているとき以上に荒れていたけれども。


「泣いてないさ、泣きそうだったかもしれないけどね。」


「やっぱりそうだよね、ごめん。君に悪いことしちゃった。」


「いいよいいよ、しょうがないんでしょ。」


向かい側の信号が黄色から赤に変わる。その時横断歩道の向こう側に見慣れた姿を見つける。目の前の信号が青に変わりまわりの人は歩き出すも、僕はその場所から動けない。


「あれ、いまどこなの?まだ実家じゃないの?」


「顔を見て話したくてさ、君の家に行こうとしてさ。迷惑かな?」


迷惑なもんか、もう一度君の顔を見れるなら。もう一度君を抱きしめられるなら、僕はどんなに幸せなことか。でも、僕の口から出た言葉は違った。


「迷惑だよ。年末で忙しいのにさ。実家でお母さんだって待ってるんだろ。早く帰りなよ。」


「ごめん、帰るね。さよなら。」


電話を切って彼女は歩き出す。


「おーい!おーい!」


彼女は振り向く。遠いけど、彼女の目には沢山の涙が見えた。僕はその涙が消えてなくなるように大きな声で叫んだ。


「がんばれよ!きっとお店繁盛するよ!俺も、ちゃんと就職決まったら行くからさ!がんばれよ!」


信号が赤に変わる。僕と彼女の間に沢山の車が走る。彼女は精一杯何か言っているが聞き取れない。都合よく解釈するなら「大好きだよ」と「ありがとう」と言っていたように思う。僕にとっても、彼女にとっても二年半の最後には相応しい終わり方なんじゃないだろうか。


次に信号が青に変わったときには彼女の姿は見えなくなっていた。横断歩道を渡り、彼女がさっきいた場所について僕はこっそりと、周りの誰にも聞こえないよう小さな声で、


「ありがとう。」


と言った。


今年箱を開けるのはやめよう。来年、年が明けてから空けよう。そうすれば僕も、彼女も幸せな2008年になるんじゃないだろうか。


家についてからは普段どおりの大晦日を過ごした。いつも通り紅白を見て、年越しそばを食べる。年越しの瞬間はコタツの中で、家族と一緒に迎えた。


一時を過ぎて、僕は自分の部屋に戻る。箱を開けるためだ。
ベッドに座り、枕元に置いたままの箱を手に取る。膝の上に箱を置き、真っ赤なリボンをほどく。白いふたを取ると中には一枚の紙が入っていた。それは、おみくじだった。


「はぁ、まさか大吉のおみくじが入ってるから一年幸せってオチじゃないだろうな。」


おみくじを手に取りあけるとそこには中吉と書いてある。大吉でもない、なんだこれ、サンタクロースの嫌がらせかな。そう思い、恋愛の項目に目を落とすと、そこにはこう書かれていた。


恋愛
新たな一歩を踏み出しましょう。
つらい別れですがお互いに価値のある別れとなるでしょう。




まるで、今日一日の、いや今年一年の行動が見透かされたかのようだった。ここまで言い当てられると心地いいものである。


「初詣に行こうかな。」


中学以来行ってない初詣に、今年はこの中吉のおみくじを結ぶために行こう。そしてそこでおみくじを引いてみようかな。大吉が出るかもしれない。急いで準備をして、家を出た。ワクワクしている。僕は今、新たな一歩を踏み出したのかもしれない。






著者:「東京ナイトウォーカー」 yukihiro

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