除夜のテキストラーイク祭り


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「黒いクリスマス赤いクリスマス」




クリスマスイブの夜、寝室で小さな娘の添い寝をしている男がひとり。


「バーイオレンスナーイト♪ホーラーナイト♪」


「マユ、なんだその歌は」


「えへへ、クリスマスのお歌。パパ、今日はクリスマスイブなんでしょう?」


「それを言うならサイレントナイト、ホーリーナイトだろう」


「ハーゲーはー、ひーかーりー!」


「誰に教わったんだ。ひどい替え歌だな」


「もも組のリュウタくん」


「誰だそれは」


「ようちえんのおともだち。ちんちんが大きいの」


「なんでそんなこと知ってるんだ!さてはお前その年で!」


「リュウタくん、すぐはだかになっておっぱっぴーするのよ」


「どんな江頭2:50で小島よしおなんだ」


「でもパパの方が大きいよ」


「幼稚園児より小さかったらパパ泣くよ。そんな変な歌を歌っていると、ブラックサンタが来るぞ」


「ブラックサンタって明石家さんまの?」


「そりゃブラックデビルだ。ていうか何故お前がそんな事知ってるんだ」


「くろいちくび?」


「そりゃブラック・ワン・ネックだ。お前ホントに幼稚園児か?」


「マユちゃん知ってるよ。サンタさんはプレゼントくれるんでしょう?」


「いい子には赤いサンタさんがプレゼントをくれる。でもブラックサンタは悪い子のところにやってくるんだ」


「マユちゃんいい子だもん」


「ブラックサンタは真っ黒の服を着て、悪い子に内臓をプレゼントしていくんだ」


「ないぞうって?」


「えーとほら、パパが好きなモツ煮。あれの生のやつ。ずるずる長くて血がべっとべとについてて気持ち悪いぞー」


「やだよう、こわいよう。もうお話おしまい!」


「ははは、ゴメンゴメン。きっとマユのところには赤くて良いサンタさんがプレゼントくれるだろうさ」


「マユ、びぜんおさふねがいい!」


「日本刀欲しがる幼稚園児なんて聞いたことない」


「だってママも大好きだって言ってたよ」


「ああ、ママの実家…じゃなかった、おじいちゃんちにあるヤツね。あの備前長船はね、ママのご先祖様のお侍が使ってた刀なんだよ。何故かママは大好きで一緒に寝ることもあったって言ってたな。ママも変わってるよね」


「でもそんなところが好きなんでしょう?」


「ホントにホントにお前幼稚園児なのか?」


「ね、そういえばママはどこ?」


「え?……あ、ああ…、ちょっとお買い物」


「ひょっとしてママがサンタさんなの?プレゼント買いに行ってるの?」


「い、いやいやいや、それは違うよ」


「マユ、リュウタくんに聞いちゃったんだー。サンタさんは本当はパパとママなんだって」


「リュウタ…ことごとくうぜええええ」


「なあに?」


「あ、いや、サンタさんは本当にいるんだよ」


「あれ、パパ、何かいい匂いがする」


「え…そ、そう?」


「こうすい?でもママの匂いとちがう…」


「さ、さあ、そろそろおしゃべりはおしまいだ!寝ないとサンタさん来てくれないぞ。お口はチャック。おやすみなさい」


「おやすみなさい。サンタさんがびぜんおさふねくれるといいな」


「まだ言うか」


素直に口と目を閉じたマユは、やがて眠りに落ちてゆき、男はそれを見届けて寝室を去った。


先程までマユに聞こえないよう、隣の部屋で妻と大喧嘩し、その挙句妻が飛び出して行ってしまった、なんてことは当然言えなかった。日本刀好きの一風変わった妻。その突拍子のなさがマユの言うとおり確かに魅力に感じた頃もあった。


今、実家にでもいるのだろうか。それともどこか行くアテでもあるのか。俺と同じように…男は自虐的に、ふ…と笑った。


ケンカの火種となった香水の匂い。マユにも気付かれるとは、相当匂いが残っていたのだろう。ありがちなドラマじゃあるまいし、俺がそんなヘマをするとは。それがきっかけで妻に見せる羽目になってしまった携帯電話の中身。誤魔化しようがないメールと発着信履歴。もう終わりなのだろうか。ともかく今は忌々しい匂いを落としたい。


男はそう思って風呂場に向かっていった。


*


何か大きな物音が聞こえた気がして、マユは目が覚めた。サンタさんが来たのかな、と夢うつつに考え再び眠りに落ちた。


*


また大きな物音が聞こえた。先ほどは寝惚けていたが、はっきりと目覚めた。来ているのはサンタさん。それともブラックサンタ。どっちかな。


「見てやろう…」


マユはベッドを出、そろりと歩き始めた。家の中は暗かったが、風呂場だけ明かりが点いていた。自然そこに足が向かった。


例えようもない悪臭がマユの鼻を突いた。風呂場は真っ赤な血がぶちまけられていた。そしていくつもの大きな袋。しかしマユにはそれが何を意味するのか分からなかった。ただ、


「あ、ないぞう!」


寝る前に父親に教わったおかげで、袋にパンパンに詰められているものが「内臓」だということは理解出来た。


「ブラックサンタだ!」


マユは怖くなった。そしておぞましい血だらけの内臓群に混じって


「ぱぱのちんちん…」


見慣れたものをひとつ見付け、幼い頭脳はパニックを起こし、マユは泣き出した。


「マユちゃん…」


後ろから声をかけられて振り向くと、ひとりの女の影がゆらりと浮き上がった。


「ママ!」


マユの母親だった。マユは堰を切ったように泣きながら立て続けに叫ぶ。


「ママどこに行ってたの?ママがブラックサンタなの?ママがないぞうをもってきたの?なんでパパのちんちんがあるの?」


「パパはね、とっても悪いことをしたのよ…」


「マユわかんない!ママは真っ赤だしマユが欲しかったびぜんおさふね持ってるし…。ママはサンタさんなの?ブラックサンタなの?どっち?」


返り血で真紅に染まった女はマユの問いかけに答える代わりに、両手で握っていた備前長船をゆっくりと振り上げた。


バイオレンスナイト。ホラーナイト。






著者:「エキスパートモード」 かじりん

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